静岡の食文化を知る
沼津のワカメ~新たな特産品を目指して~
公開日:2024.07.03
水産物
特集
春
沼津市は水産業が盛んな地区で、シラス漁などの漁船漁業のほか、県内では珍しい、マダイやマアジといった海産魚類の養殖が多く行われています。そんな沼津市では、近年、海藻の養殖も盛んになってきており、その代表的なものがワカメです。ワカメは水温の下がる冬季に育成し、春に収穫されます。塩蔵品や加工品であれば、周年楽しむことができますが、新鮮な生ワカメは春の一時期にしか食べられない貴重な食材です。ワカメの養殖自体は県内各地で行われていますが、生ワカメの食感を楽しむには鮮度が重要なため、主に産地周辺で消費されています。
今回はそんな沼津のワカメと、沼津のワカメをより多くの方に食べていただくために行った取組について御紹介します。
沼津のワカメは、普段はしらす漁や魚類養殖など、様々な漁業に従事している漁師の方々によって生産されています。ワカメの養殖は、年末くらいに、小さなワカメをつけたロープを海に浮かべるところから始まります。海に浮かべられたワカメは海中の栄養と太陽の光で育つので、陸上の植物のように水や肥料を与える必要はありません。はじめは目に見えないほどの大きさだったワカメが、冷たい冬の海の中でぐんぐん成長し、わずか2、3か月足らずのあいだに長いものでは1メートルを超えるほどの大きさになります。
海の中で育つワカメ
成長したワカメは漁師の方々によって収穫されます。ロープから生えるワカメを丁寧に一本ずつ刈り取っていきます。この段階のワカメには、根元部分に「メカブ」がついていますが、メカブは取り分けて葉の部分とは別に販売されます。
収穫の様子 メカブ
次に収穫したワカメを陸に持ち帰って選別作業を行います。自然の海の中で育てられるため、収穫されたワカメには小さな生き物や汚れがついているものもあります。選別作業では、それらを手作業で取り除き、きれいな部分だけを残します。
選別作業の様子
ここまで終わると、ようやく売り物にできるワカメになります。こうして手間をかけて生産されたワカメは、主に生ワカメとして周辺の直売所や近隣の飲食店等で提供されています。新鮮な生ワカメは、地域の方々から大変好評であり、人気の商品となっています。
次に、そんなワカメをより多くの方に食べていただくために行った取組について紹介します。
現状、沼津のワカメは生ワカメとしての販売が主であり、地域の方々に人気となっていますが、今後の生産拡大のためには、新しい食べ方の開発や、販路の拡大も必要となってきます。そこで、「食の都づくり仕事人」が経営している飲食店に生ワカメを持ち込み、評価を受けるとともに、新しい食べ方の検討及び販路拡大に向けた課題の整理を行いました。
仕事人にワカメの茎、メカブ、葉の部分それぞれを提供し、評価いただいた結果、茎やメカブの食感の良さや、葉の部分をゆでた際の色の変わり方が非常にきれいで良いとの評価をいただきました。
また、ワカメの食べ方といえば、味噌汁やサラダが一般的ですが、スムージーやスイーツとしての利用の可能性が示され、ワカメの食べ方の可能性が広がりました。
販路拡大に向けた課題の整理では、来店した一般の方々に沼津のワカメを提供いただき、お話を伺った結果、「沼津でワカメが生産されていることを知らなかった」といった声が聞かれるなど、認知度の向上が課題であると明らかになりました。また、仕事人の方からは、他産地のものと比べた際の品質の違いが明確であったほうが、お客様に説明しやすく、使いやすいといった意見をいただきました。今後は、これらの課題を踏まえつつ、沼津のワカメが、新たな特産品として広く受け入れられるよう、関係者と力を合わせていきたいと考えています。
#沼津市