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静岡県は缶詰王国!?ツナ缶の起源と製造について

公開日:2024.09.05

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サンドウィッチやサラダ、パスタなど、様々な料理に使われて、食卓でもお馴染みのツナ缶。実は静岡県が、日本一の生産地だということをご存知でしょうか?静岡県は10社以上の缶詰メーカーを抱える缶詰王国。ツナ缶の全国シェアは、97%にも及びます。なぜ、静岡県でそれほどツナ缶の製造が盛んなのか?静岡県焼津市でツナ缶の製造を行う食品メーカー「株式会社STIサンヨー」を訪ねてお話を聞きました。

 

静岡県中部に位置する焼津市。古くから漁業で栄え、焼津漁港はマグロ・カツオの水揚げ量日本一を誇る遠洋漁業の基地として知られています。「STIサンヨー」は、そんな焼津漁港のほど近くにあります。

 

 

「急速冷凍技術がなかった時代、マグロやカツオを鮮度の高い状態でツナ缶に加工するのに、焼津漁港に近い立地は最適でした。」

 

そう語るのは、株式会社STIサンヨー社長の橋本貴史さん。1950年の創業以来、長年にわたりツナ缶の製造を手掛けてきました。橋本さんはツナ缶の起源をこう語ります。

 

 

「18~19世紀、ナポレオンは軍の食料問題を解決するために、保存食のアイデアを募りました。その時に採用されたのが、真空詰めして加熱・殺菌した瓶詰食品だったのです。その後、割れやすい便を金属製の容器に置き換える形で缶詰が発明されました。ツナ缶は1903年にアメリカで発明された食品で、発売されるとすぐに大人気の商品になりました。そこで、日本国内でも製造・輸出すべく全国各地で製造方法の研究が行われました。そんな中、静岡県水産試験場(現静岡県水産・潰瘍技術研究所)の村上芳雄という人物と焼津水産学校(現静岡県立焼津水産高等学校)が協力して、1929年に日本で最初にツナ缶の製法を確立したのです」

 

その後、焼津ではいくつものツナ缶メーカーが設立され、アメリカやカナダに製品を輸出。品質の高さが認められ、現地でも人気を博したそうです。しかし、貿易摩擦などの影響で輸出が難しくなり、各メーカーが国内流通に力を入れるようになりました。そして、次第に日本の食卓にもツナ缶が定着することになったのです。

 

STIサンヨーの歴代のツナ缶のパッケージ。1950年から変わらぬ製法で作られています。

 

現在、多くのメーカーが海外でツナ缶の加工を行っていますが、STIサンヨーは製造の全行程を国内の自社工場で手掛けており、しかも1929年に初めて確立された製法を今も忠実に受け継いでいます。

 

「当社のツナ缶は、缶胴と呼ばれる缶本体と缶蓋を重ねて巻きつける”二重巻締”という昔ながらの方法で密封されています。また、他のメーカーはキハダマグロを使った製品が多いですが、当社では基本的に便ながマグロを使っています。色味が白くて見た目が良く、柔らかくて食べやすいからです。合わせる油はさっぱりして軽い綿実油。近年はオリーブオイルを使ったツナ缶やミナミマグロの頭肉を使ったツナ缶など、様々なバリエーションの商品を展開しています」

 

 

ツナ缶がどのように作られているのか、工場を見学させていただきました。

 

 

この日はバチマグロやカツオを使ったツナ缶が作られていました。写真は急速冷凍したバチマグロを解凍しているところ。流水をかけながら一晩かけて解凍します。

 

 

解凍した魚は、蒸煮(じょうしゃ)という工程に移され、大きな蒸気釜の中で蒸し上げられます。小さい魚は丸ごと、大きな魚はカットして釜へ。魚種やサイズによって温度や時間を調節します。蒸しあがった魚は一晩かけて冷まします。

 

 

次の工程では、頭、内臓、骨、皮などを除去。さらに血合や小骨を丁寧に取り除き検品します。

除去した部分は家畜の飼料に使われます。

 

 

 

綺麗に身だけの状態にした後、専用の機械に投入して、一定の大きさに収まるようにフレーク状に加工。異物の混入がないか目視でチェックした後、缶に詰められます。

 

 

続いて、調味液とオイルを注入。

 

缶の中の空気を抜きつつ、昔ながらの二重巻締で密封します。

 

 

洗浄機で外の汚れを落としたら、カゴに並べて大きな蒸気釜に入れ、115℃の蒸気で70分間殺菌。

 

 

賞味期限を印字した後、箱詰め前にX線検査機で全量をチェックしてから出荷されます。

 

 

原料から商品になって出荷されるまで約3日間。1日に約2万5000缶が生産されます。

 

 

 

最後に橋本さんにおすすめのツナ缶の食べ方を聞いてみました。

 

「焼津の人は、ツナをそのままご飯の上にのせてちょっと醤油を垂らして食べるのが基本。ツナ本来の味を堪能できますから」

 

 

静岡県の隠れた名産品、ツナ缶。ぜひ、そのおいしさを改めて実感してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#焼津市