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静岡県いちごの奥深さを体験! 生産者の想いが詰まった品種を食べ比べ&いちご狩り

公開日:2025.02.12

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好きなフルーツランキングで常に上位にランクインしているイチゴ。鮮やかな赤い果実と甘酸っぱい爽やかな味わいは唯一無二。そのまま食べても美味しいですし、ケーキなどスイーツの美味しさも引き立ててくれます。実は静岡県は、そんなイチゴの全国有数の名産地だということをご存知でしょうか? 県内では、東・中・西部、幅広い地域でイチゴが栽培されており、「紅ほっぺ」や「きらぴ香」といった静岡県産まれの品種も全国から人気を集めています。そこで今回は静岡県産のイチゴの魅力を探るべく、伊豆の国市にあるJAふじ伊豆韮山営農経済センターで生産者の方々にお話を伺いました。

 

 

 

伊豆の国市は県内有数のイチゴの産地で、「紅ほっぺ」を県内でいち早く本格導入するなど、精力的にイチゴの栽培に取り組んでいます。

 

「伊豆のイチゴ栽培の発祥の地は三島市玉川とされています。そこから伊豆の国市の韮山エリアにも伝わって、昭和27年にイチゴ栽培が始まりました」と教えてくれたのは、JA静岡経済連の藤浪利彰さん。

 

「静岡県全体としては、令和3年度のイチゴの産出額が全国5位、作付面積は全国4位となっています。県下各地でイチゴの栽培が行われており、農地は230haに及びますが、静岡県は観光地が多いため、その半分ほどが観光農園となっているのが特徴です。また、静岡県では、『静岡県いちご協議会』を組織して生産者の連携を強化し、農協でまとめてイチゴを選別して出荷する共選共販を徹底しています。それによりまとまった量を都市部の市場に出荷できるため、世の中に多く流通して知名度を高められるという狙いもあります」(藤浪さん)。

 

 

 

(藤浪利彰さん)

 

農家が一丸となってイチゴを生産している静岡県では、新品種の育成にも力を入れてきました。

 

「現在は、『紅ほっぺ』と『きらぴ香』を協議会の奨励品種にしています。昨年、生産された4600トンのうち、約7割が『紅ほっぺ』で3割が『きらぴ香』となっています。『紅ほっぺ』は、2002年に品種登録されてから長らく県を代表する主力品種でした。その後、新たに作られた品種が『きらぴ香』です。『きらぴ香』は、光沢があって見た目も綺麗で香りも豊か。次の主力品種として期待されています」と韮山営農経済センターの原新太郎さんは説明します。

 

 

 

 

(原新太郎さん)

 

「近年の夏場の猛暑はイチゴ栽培にも影響を与えています。イチゴは寒さが刺激になって花芽を出すのですが、暑さが続くため花芽が出る時期が遅れ、需要の多いクリスマス時期に出荷が間に合わなくなるという問題が起きています。新しい品種の『きらぴ香』は暑さの影響を受けにくいため、近年の気候に合った品種と言えるかもしれません」

 

このように『きらぴ香』の特徴を教えてくれたのは、静岡県いちご協議会会長で、伊豆の国苺委員会の委員長も務める飯田寿夫さん。自身もイチゴ農家として『紅ほっぺ』と『きらぴ香』を育てています。

 

 

 

(飯田寿夫さん)

 

「わんわん泣いていた子供にイチゴをあげると途端に泣きやんで黙々と食べ始める。そんな様子を見ているだけでイチゴを作っていて良かったなと思えます。多くの人に愛される美味しいイチゴを作るためにこれからも努力を続けていきたいですね」(飯田さん)。

 

 

 

県内で栽培されるこだわりのイチゴを、実際に堪能するため訪れたのは、静岡市清水区南部の久能海岸。目の前に雄大な駿河湾が広がります。海岸線に沿った道路を行くと陸側にたくさんのビニールハウスが見えてきます。

観光農園が多いとされる静岡県の中でも、有数のイチゴ狩りスポットです。

 

 

 

「この地域では温暖な気候と南側斜面の日当たりの良さを生かして、昔からイチゴの栽培が行われてきました。この辺りでいちごを栽培しているのは大半が観光農園で、一般の方にイチゴ狩りを楽しんでいただいています」と説明するのは、イチゴの栽培を手がける「やませイチゴ農園」の中村久美さん。

 

 

収穫できるようになるのは早くて11月下旬から。その後、5月頃までイチゴ狩りを楽しむことができます。

 

「やませイチゴ農園では、以前は『章姫』という品種だけを育てていましたが、現在は『紅ほっぺ』、『きらぴ香』、『よつぼし』を加えた4品種を栽培しています。農園には約60棟のビニールハウスがありますが、基本的に1棟で2品種を栽培しており、食べ比べを楽しむことができます」

 

時期ごとに食べ頃のイチゴを収穫してもらうため、品種の指定はできませんが、品種に分けてイチゴを食べ比べると、味の違いがはっきりわかります。

 

 

 

ビニールハウスに描かれた丸の色が、中で育てられているイチゴの品種を表しています。

 

 

中村さんに美味しいイチゴの見極め方と味わい方を聞いてみました。

 

「イチゴが一番美味しくなるのは寒さが厳しい12月です。じわじわ赤く色づいて甘みがたっぷり蓄えられるからです。美味しいイチゴはヘタの形で見分けられます。ヘタがまつ毛のように上にそり返っているのが熟している印です。また、ヘタの下の果肉が少し白く割れてきているイチゴがありますが、それは傷んでいるのではなく、果肉に含まれる糖度が限界に達するほど完熟している抜群に甘いイチゴの証拠です。食べる時は先にヘタを取り除いて、ヘタがついていた方から食べましょう。先端の方が甘みが強いので、最後まで美味しく食べられます」

 

 

 

実際にその食べ方を試してみると、酸味と甘みが口の中にバランスよく広がり、まさに絶品。イチゴ狩りに行った時はぜひ試してみてください。

 

 

静岡県のイチゴには、生産者の情熱と自然の恵みが詰まっています。その背景にも思いを馳せながら、一粒一粒をじっくり堪能してみてください。きっと、これまでとは違う美味しさを感じられるはずです。

品種や地域によって多彩な静岡県のイチゴ。是非、静岡県に来てお楽しみください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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