レストラン

　古城を思わせる佇まいの「Café＆Restaurant LENRI」。大きな連理木（れんりぼく）を望む二階席の窓越しには、多彩な作物が育つ農園が広がっている。ここで食の新たな可能性を創出しているのは、2012年に「ふじのくに食の都づくり仕事人」として表彰されたフレンチシェフの町田通さんだ。

　町田さんが籍を置く「愛管株式会社」は主に配管工事を手がける企業だが、飲食、保育、農園、グランピングなど、多角的な事業を展開する企業としても知られる。その同社レストランがリニューアルするタイミングで町田さんがレストラン事業部長に就任し、地域の食材をアートのように調理するLENRIが生まれた。店の傍らには同社経営の保育園があり、子どもたちが野菜づくりを学ぶ畑もある。

　生産者の想いを料理に表現する町田さんは、食農連携をテーマに掲げて、無農薬で野菜を育てる「加藤農園」や、引佐の「峯野牧場」といった地元の生産者と協働イベントを開催している。また、浜松の「花の舞酒造」見学ツアー、歯の健康を意識した歯科医との料理提案など、その発想と活躍ぶりは多種多様だ。保育園の子どもが育てた野菜を料理に使用することもあるという。2024年には同じ敷地内にパティスリーも開店する。

　異なる樹木が結合する連理木のように、食と農をつなげ、地域の可能性を大きく飛躍させる町田さんの活動。その先進的な試みは持続可能な未来へつながる管なのかもしれない。

「Café＆Restaurant LENRI」の前に広がる農園で、町田さん自身も作物の栽培や収穫に携わる。

保育園児に野菜作りのことを語りかける町田さん。園児が興味津々の表情を見せる。

農園ではレモン、ブルーベリーなどの果実類やハーブ類を農薬不使用で栽培している。

果樹園と連理木を眺められる2階席。細部の意匠にとことんこだわった上質な空間。

※「The 仕事人 of the year 2023の受賞者のご紹介」記事より