静岡の食文化を知る

東部

富士山の伏流水でおいしいうなぎに! 三島うなぎのおいしさの魅力に迫る

公開日:2024.03.14

水産物

和食

特集

 

静岡県はうなぎがおいしい県として知られています。県内では、浜松市・吉田町・三島市がうなぎで知られるエリアですが、養殖うなぎの産地である浜松市・吉田町と異なり、三島市は養殖の産地ではありません。では、なぜ三島のうなぎが有名なのか。そのおいしさの秘密に迫ります。

 

三島とうなぎの関係は三嶋大社にあり?!水の都・三島が育むうなぎの魅力。

 

 

三嶋大社の池にはうなぎが住んでおり、うなぎを食べると罰が当たると言われており、徳川2代将軍・秀忠が三島に滞在した際、うなぎを食べた家臣を死刑にしたという言い伝えも残されています。その後、明治維新の頃に反幕府派であった薩摩・長州の武士がこの地でうなぎを食しても罰が当たらなかったため、以降、地元の人もうなぎを食べるようになり、あちらこちらでうなぎを提供する店が増えていったといいます。

 

かつては三嶋大社の池にいたうなぎを食していましたが、現代においての三島うなぎは、特定の産地のものではありません。「三島にはお店が多いからうなぎが有名になった」、それはもちろんそのとおりなのですが、三島うなぎが有名になったのは、その味が評価されてのことなのです。

 

 

三島市は「水の郷百選」にも選ばれ、「水の都」と呼ばれるほど水に恵まれたところです。富士山に降った雪や雨が長い年月をかけて溶岩流に染み込み、伏流水となって市内のいたるところから湧き出ています。まろやかな軟水で、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を適度に含み、新鮮な味がすると言われています。
この三島の伏流水にうなぎをさらすことで、生臭さや泥臭さがなくなる上に、余分な脂が落ち、うなぎがおいしくなります。 

 

三島の水は、高度成長期には工業用水等の影響で水が汚れていた時期もありましたが、1990年代にNPOや市、民間が協力して三島の水を再生しました。それも三島が「水の都」と呼ばれるようになった一因です。

 

1856年創業の老舗「うなぎ 桜家」で三島うなぎをより美味しくいただく。

 

 

伊豆箱根鉄道 三島広小路駅から徒歩1本のところにある「うなぎ 桜家」は、1856年(安政3年)創業の老舗です。平日は1日に300〜400人、休日となると500人ほどのお客さまにうなぎを提供している人気店です。

 

創業当時は、桜家の名のとおり、桜肉、つまり馬肉を提供するお店でしたが、当時の時代の流れにのり、うなぎを提供するようになったそうです。

 

 

「父と一緒にうなぎを焼いてきましたが、私が20歳のときに父が突然倒れ、他界してしまいました。きっともっとうなぎを焼きたかったはず。周りからは社長と呼ばれ、たくさんの従業員を抱えていますが、父の思いを継ぐためにも、今でも自分でうなぎを焼き続けています」と話す社長の鈴木潮さん。
炭火の前に、毎日、長時間、立ち続けていることから、顔はすっかり赤くなり、職人魂を感じます。焼き場に立つのは、弟子の関さんとたった二人しかいません。関さんも中学卒業後の15歳のときに店に入り、この道ひと筋の職人です。
「あちらこちらから出店の話は本当に多い。でも、自分が今でも焼き場に立ってうなぎを焼いているから、もう1店舗なんてのは考えられない」。

 

 

「うなぎ 桜家」では、立て場(たてば)と呼ばれるところで、地下50mほどのところにある富士山の伏流である地下水を汲み上げ、2、3日水にさらし、泥を吐かせ、そしてきれいな水でさらしていきます。
うなぎのぬるっとした部分は、ムチンと呼ばれるもので、このぬめりがあることでうなぎは保水力を持ち、生きることができます。カルキが入った水道水にうなぎをさらすと、うなぎはこのムチンを失い、死んでしまいます。

 

「うなぎは全部同じではなく、個体差がある。養鰻業者も複数のところから仕入れているので、それこそうなぎ自体は全く違うわけです。でも、お客さんに出すときには同じ味に仕上げる。それが職人の仕事なんです」。
そんな「うなぎ 桜家」の味を「かるみ」と表現し、ほかに真似できない、“食べて食べ飽きない味”に仕上げています。

 

 

 

 

 

「うなぎ 桜家」のうなぎは、東京の焼き方とは異なります。生の状態のものを金串に刺して備長炭の1200度の炭火で焼き、それから銅製せいろで蒸した後、タレをつけてもう一度焼く。この作業の中で、脂をほど良く落としていくことで、脂っぽくなり過ぎずに“食べて食べ飽きない味”になります。

 

この焼き方が「うなぎ 桜家」の職人の腕の見せどころ。炭火の火力は場所によって異なるため、うちわを巧みに使い、風を起こし、ときには風を止め、異なる炭火の火加減を調整し、返しを繰り返すことで均等に焼き上げていく。
「裂き三年、串うち八年、焼き一生」。うなぎ職人の格言に、こんな言葉があります。「うなぎ 桜家」のうなぎを焼くのは、誰もができることではなく、鈴木さんと関さんの二人にしかできないことです。

 

 

「うなぎ 桜家」のうなぎは、表面が香ばしく焼き上げられ、ふわっとやわらかい食感。うなぎを食べると「重い」「くどくて苦手」と言う方も少なくないと思いますが、脂が絶妙な加減で落とされているために、白身魚のポワレのような食感で、くどくないのです。

 

「うなぎは甘すぎると、最初は食べられるけどだんだん飽きてくる。そうはならないように、最後のひと口を食べたときに、“まだ食べたい”と思ってくれる味に仕上げているんです。そういうことを、常に炭火の前で考えながら焼いているんです。そして、水がおいしいというのは、料理の上でとても大事な部分。三島の水がおいしいからこそ、おいしいうなぎが提供できる」。

 

富士山の伏流水にさらされ、臭みもなく、おいしく仕立てられたうなぎは、「うなぎ 桜家」の職人により、さらにおいしく仕上げられます。ぜひ、お近くにお越しの際は立ち寄ってみてください。

 

 

店舗情報
店名:うなぎ 桜家
住所:静岡県三島市広小路町13-2
電話:055-975-4520
http://www.sakura-ya.net/

 

三島うなぎについてもっと知りたい場合は……

 

 

三島うなぎがいただける店舗情報については、下記でも詳しくご紹介しています。

三島美食良旅 ガストロミーツーリズムみしま
三島のうなぎの特徴
三島うなぎの店舗情報

三島市観光WEB
三島市旅行パンフレット

#三島市