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三ヶ日みかんの魅力 ― 受け継がれる伝統と生産者のこだわり
公開日:2025.03.11
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静岡県浜松市の浜名湖北岸に位置する三ヶ日(みっかび)地区は、日本有数のみかんの産地として広く知られています。「三ヶ日みかん」としてブランド化され、濃厚な甘みとほどよい酸味のバランスが特徴で県内外で高く評価されています。今回、三ヶ日みかんの生産者である夏目芳彬さんと、JAみっかび広報センターの久米覚さんにお話を伺い、その魅力と生産へのこだわりについてお聞きしました。
三ヶ日みかんの歴史とブランド
三ヶ日でみかん栽培が始まったのは江戸時代にさかのぼります。温暖な気候と水はけのよい土壌が栽培に適していたことから、明治以降に徐々に栽培が広まり、まちの主要な産業へと成長しました。
昭和30年代には、より甘みが強く貯蔵性に優れた「青島みかん」の栽培が三ヶ日で広まり、三ヶ日みかんの名が全国に知られるようになりました。この品種は、果実が大きく、濃厚な味わいが特徴で、長期間の保存にも適していることから、冬の贈答用としても人気を集めています。
「期待してくださるお客様に、決まった数を、変わらない品質で届けることが大切です。そのために、必要な作業を適切なタイミングで行い、畑の状態を常に整えています」と夏目さんは話します。
また、その意識をすべての組合員が共有し、共に品質維持に努めていることも、三ヶ日みかんのブランド価値を支えている大きな要因です。
三ヶ日みかんが美味しい理由
三ヶ日みかんの美味しさの秘密は、自然環境と生産者の技術にあります。
「三ヶ日の土壌は赤土で、石が多く含まれています。このような土壌は水はけが良く、みかんの根が深く張りやすい環境を作ります。みかんは水分が多すぎると糖度が上がりにくくなるため、水はけの良さは甘さを引き出す大切な要素です。
さらに、三ヶ日の畑の多くは南向きの斜面に位置し、他の産地と比べても日照時間が長くなります。みかんは光合成によって糖を蓄える性質があるため、十分な日光を浴びることで、より甘く濃厚な味わいに育ちます」と夏目さんは説明します。
さらに、栽培の過程では、土壌pHを調整するための肥料管理や、剪定作業を適切に行うことで木の健康を維持しています。「普通は表年・裏年ができてしまいますが、木を管理すれば毎年安定した収穫が可能です。必要なときに必要な作業を行うことが、品質を守るためには欠かせません」と夏目さんは語ります。
収穫後の管理にもこだわりがあります。「みかんは自らエチレンガスを発生させ、これが過剰になると劣化を早めると言われています。そのため、貯蔵庫ではオゾンを使用してガスを相殺し、高い湿度と適切な温度(5度程度)を保つことで鮮度を維持しています」(夏目さん)。
三ヶ日みかんの代表品種「青島みかん」の特徴
「通常、みかんは糖度13度ほどで十分甘いとされますが、作り方によっては、青島みかんは15度近くに達することもあります。ただ甘いだけではなく、コクがあるのが魅力です」と夏目さんは言います。
また、果皮はやや厚めで、長期保存に適しています。色も濃く、見た目にもその濃厚な味わいが伝わります。
三ヶ日みかんには、健康を支える栄養素も豊富に含まれています。
久米さんは、「みかんにはβ-クリプトキサンチンが含まれています。これは骨の代謝を助ける働きのある成分で、みかんをよく食べる人は骨の健康を維持しやすいことが研究で分かっています」と話します。
三ヶ日みかんの多彩な楽しみ方
三ヶ日みかんは、大きさや糖度によって等級分けがされ、販売されますが、一定の等級に満たないみかんも出てきます。そんなみかんは、あらゆる形に加工商品化され、豊富なバラエティーとなっています。
「特におすすめなのは三ヶ日みかんのドライフルーツです。砂糖を一切加えず、みかん本来の甘さを凝縮させています。一袋にみかん三つ分が入っているので、満足感もあります」と久米さんは話します。
その他にも、「100%みかんジュースは、その年によって味が変わるため、毎年異なる風味を楽しめます。最近では、新商品として『ミカちゃんゼリー』が登場しました。三ヶ日みかんの公式キャラクター「ミカちゃん」を、静岡文化芸術大学の学生がアレンジしたデザインを活用し、親しみやすいパッケージに仕上げています」と久米さんは紹介します。
この『ミカちゃんゼリー』は、静岡県が本県の農林水産物を使用した加工品を表彰する「ふじのくに新商品セレクション2024」で金賞を受賞しています。
三ヶ日みかんは、長い歴史と生産者の努力によって築かれてきたブランドです。品質を守るための細やかな管理と、地域の自然環境が生み出す特有の味わいが、多くの人々に愛され続けています。
ぜひ一度、三ヶ日みかんを味わい、その魅力を体感してみてください。
#浜松市