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美味しさの秘密は「鮮度」にあり。大井川の伏流水が育んだ「吉田町うなぎ」

公開日:2025.10.30

水産物

 

うなぎは古くから日本人に愛されてきた食材です。静岡県吉田町はうなぎの名産地として語られます。吉田町にある「静岡うなぎ漁業協同組合」の出荷場を訪ねて、吉田町うなぎの秘密を探ってきました。

南アルプスを水源とし、駿河湾に注ぐ大井川。出荷場はその河口の近くにあります。大正時代、大井川河口地域の水田が洪水の被害を受けて荒れ、稲が育たなくなったことをきっかけに、吉田町では大井川を源とする豊富な地下水を生かしてうなぎの養殖が始まったと言われています。

 

 

昭和30年代から40年代頃にかけては、吉田町うなぎの生産量が全国の約4割を占めるほどの国内屈指の名産地となり、町の面積の1/10がうなぎを育てる養鰻池(ようまんいけ)として使われていたそうです。

 

 

「ここは『浸場(つけば)』と呼ばれる独自の施設です。水温約30℃の養鰻池から揚げたうなぎをビク(通称:かぼちゃ)に入れ、水温約16℃の浸場の冷水に一昼夜かけて浸します。うなぎが冷やされることで体内の異物や独特の臭いを取り除き、さらに身が引き締まる効果があると言われています。吉田町うなぎは浸場を通過した、新鮮な活うなぎです」

 

 

そう話すのは、静岡うなぎ漁業協同組合の営業課の山田 明秀(あきひで)さん。

「組合員の養鰻家さんは、約半年から1年半かけて稚魚からうなぎを育てています。ビニールハウスで囲われた養鰻池は、池の底面に土や砂利を敷いて地下水を利用し、自然界に近い環境作りをしています。出荷サイズまで育ってきたら組合にうなぎが運ばれます。しずおか農林水産物認証制度に基づいた飼育管理をしており、池揚げ前の活うなぎは全ロットで水産医薬品の残留検査の実施をしています。新鮮な活うなぎを、適正価格で安定供給できることも組合の強みの1つです」(山田さん)

 

 

浸場の後は、選別場でうなぎのサイズ選別が行われていました。活きの良いうなぎを1匹ずつ丁寧に仕分けし、纏まったらザルへ入れていきます。

 

 

「選別した後の立場においても、ザルに入ったうなぎの鮮度を保つために、地下水でうなぎを洗い流しています。吉田町うなぎには、大井川の豊かな地下水が命なのです」(山田さん)

 

 

ザルの中を覗いてみると、やや青みがかった銀色の体色のうなぎがぎっしり。

「活うなぎの販売だけでなく、組合には加工場があり、うなぎ加工品も製造しています。加工の工程においても、うなぎの鮮度を重視しています。一般的な加工場の多くは、うなぎを捌く時に氷や電気ショックを使って仮死状態にしてから捌くところが多いですが、組合の加工場では1匹ずつ活きた状態のまま熟練の職人が捌いています。美味しいうなぎ加工品をつくる上での拘りポイントです。HACCPに基づく衛生管理をしており、出荷前の製品はロット毎で細菌検査の実施をしています」(山田さん)

 

 

組合の加工場で製造したうなぎ加工品を販売している、漁協直営の「吉田売店」。ここでは、店内で調理したうなぎ弁当(テイクアウトのみ)や真空パックされた蒲焼や白焼をお土産に買って帰ることができます。

 

 

中でもおすすめなのが、静岡県産うなぎを1匹贅沢に使った「特大一尾弁当」。細長い弁当箱に収まった大サイズのうなぎがインパクト抜群! 関東風でしっかり蒸した後、なるべく焦がさないように焼き上げられているようです。蒸すことで無添加のタレも馴染むのだとか。食べてみるとまさに“とろふわ”な食感。醤油ベースのキリッとした味わいのタレで、うなぎ本来の味わいも感じられます。それでいて、脂が多すぎないので、しつこくなく後味もさっぱりしています。

 

 

2023年に開催された第17回静岡県水産加工品総合品評会では、「うなぎ蒲焼(真空パック)」が最高位である農林水産大臣賞を受賞。その美味しさと品質の高さ、安全性が高く評価されたのです。

 

 

「吉田町はうなぎ養殖の歴史が古く、100年を超える歴史があります。代々受け継がれてきた伝統の技術を守りながら、安全・安心のうなぎをお客様のもとに届けられるよう努めてまいります」と山田さん。

 

20256月には、組合が吉田町と連携し、大阪・関西万博の静岡県ブースに設置されたフードトラックでうなぎの蒲焼を使った一口サイズのおむすび「吉田うなぎの至高の一口結び」を提供したところ、大きな人気を博したといいます。今後、吉田町うなぎの魅力がより多くの人に伝わっていくことでしょう。

 

 

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