静岡の食文化を知る
東部
美食家を虜にする三島のブランド野菜。「箱根西麓三島野菜」が選ばれ続ける理由
公開日:2026.01.16
野菜
特集

箱根の山々に抱かれた、静岡県三島市の西麓地域。標高50mを超える丘陵地で育つ野菜は「箱根西麓(せいろく)三島野菜」と呼ばれ、その品質の高さから、多くの料理人や美食家たちに愛されています。しかしなぜ、この三島野菜はそれほどまでに、特別な存在なのでしょう?
今回は地域振興を目指す「のうみんず」を率いる宮澤竜司さんに、そのおいしさの真髄と、野菜作りのこだわりを伺いました。

宮澤さんの畑が位置するのは、標高約350メートルの笹原地区。一日中日が降り注ぎ、雄大な富士山を間近に望む、絶好のロケーションにあります。

笹原地区は、市内の根菜の約8割を生産する、まさに三島野菜の心臓部です。最大の特徴は、箱根山の火山灰土と赤土が混ざり合った独特の土壌。「水はけが良いのに、栄養を保持する力も高い」という、野菜にとって理想的な環境が整っています。
「ここの土は、雨の後でも泥団子が作れないほど、サラサラなんです」と宮澤さん。
このきめ細かく柔らかい土のおかげで、にんじんや大根はストレスなく、どこまでも深く、まっすぐ綺麗に伸びていきます。

宮澤さんは、12年前に祖父の跡を継いで就農しました。しかし、待っていたのは二世代分の大きなギャップ。そんな彼を救ったのは、農協青年部の仲間や先輩たちの存在でした。
「農業は孤独な作業じゃない。みんなで知恵を出し合えば、もっと可能性が広がるはず」
そんな想いから結成されたのが、「のうみんず」です。活動10年目を迎えた2025年。宮澤さんは新しいリーダーに就任し、仲間とともに三島野菜のさらなる可能性を切り拓いています。

冬に収穫期を迎える野菜といえば、にんじん。そのおいしさを支えるのは、作付け前に行われる徹底した土づくり。宮澤さんは、にんじんを植える前に必ず「麦」を育てます。
麦の根には驚くべき「土壌浄化能力」があり、土の中の過剰な成分をリセットしてくれるのだとか。この「土を洗う」手間をかけることで、エグみのない、にんじん本来の甘みが引き出されるのです。

サラサラとした土の中から現れたにんじんの、なんと美しく、おいしそうなこと!
「何もつけずに、生のままかじってみてください。甘くて、おいしいですよ」と宮澤さんは胸を張ります。

麦の力を借りて土を整えることで、農薬や肥料を最小限に抑える「減肥・減農薬」が可能に。自然の循環を活かしたこの栽培方法が、健やかな三島野菜を育みます。

にんじんの横で育つのは、シュッとスマートに伸びた黄にんじん。
「これは今、土との相性をテストしている最中です。彩りもいいし、料理のインスピレーションが膨らみそうでしょう?」そう言って笑う、宮澤さん。

標高350メートル、空に近いこの場所は、三島市街から気温が4度ほど低いといいます。
富士山から吹き下ろす寒風にさらされる大根は、凍えてしまわないよう、自らの体内でデンプンを糖に変えて蓄えるのだとか。この厳しい寒暖差こそが、深い甘みと、キメ細やかな食感を生む天然のエッセンスなのです。

宮澤さんの畑で育つ大根は、大きく、吸い込まれるように白く、まっすぐです。
「見てください、この肌のきれいさ。三島の土で、ストレスなく素直に育ってくれた証拠です」
そう語る宮澤さんの眼差しは、誇らしげで、温かな愛情に満ちていました。

「箱根西麓三島野菜」の魅力は、その多彩さにもあります。代表格の馬鈴薯をはじめ、にんじん、大根、キャベツ、レタス、白菜、トマトなど、そのどれもが一級品。この層の厚いラインナップこそが、多くの料理人を惹きつける理由です。
宮澤さんの畑では大根だけでも、コロンとした形の「丸大根」、赤色の「紅(べに)くるり」、紫色の「藤くるり」など、個性派たちが元気いっぱいに育っています。

「中がどうなっているか、見てみますか?」
そう言って宮澤さんが、採れたての「紅くるり」と「藤くるり」をその場で特別にカットしてくれました。

ナイフを入れた瞬間、思わず「わあっ」と声が漏れます。
「紅くるり」は、芯まで驚くほど深いルビー色。一方の「藤くるり」は、気品のある紫色が、美しい模様を描いています。冬の澄んだ空気の中で、滴り落ちそうなほど瑞々しい断面が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていました。
この贅沢な「箱根西麓三島野菜」を、家庭で手軽に楽しむ方法を宮澤さんに教わりました。 それが、にんじん農家の食卓で愛され続けてきた「にんじんそば」です。

作り方は、驚くほど簡単。そばつゆの中に、スライスしたにんじんを溢れんばかりに投入し、じっくり煮込むだけ。にんじんの濃厚な甘みが溶け出したその一杯は、お腹も心も満たしてくれる、滋味あふれる味わいです。

もっと本格的に楽しむなら、三島市街へ。三島市内では、多くの飲食店で「箱根西麓三島野菜」を使った料理が提供されており、旬の味わいをさまざまなかたちで楽しむことができます。
なかでも、バーニャカウダソースをオリジナルでアレンジし、「箱根西麓三島野菜」とともに味わう新ご当地グルメ「みしまバーニャ」は、市内20店舗以上の飲食店で提供されており、三島ならではの食の魅力として親しまれています。
そうした三島市内の飲食店の一つが、三島広小路駅近くの「四季酒菜 風土(ふうど)」。ここでは、「箱根西麓三島野菜」を使った多彩な料理を、一年を通じて楽しむことができます。
その時々で、最もおいしい野菜に出会えるのが、このお店の魅力。生産者の想いが詰まった三島の「今」を、お酒とともに味わってみてください


そして、「箱根西麓三島野菜」は、JAふじ伊豆のファーマーズマーケット「みしまるかん」や、サントムーン柿田川にある「おなかすいたふぁーむ」など、市内の販売店で購入することができます。

店内には、宮澤さんや「のうみんず」の仲間たちが育てた、選りすぐりの三島野菜が並びます。じっくり吟味して、今日の献立に加えてみてはいかがでしょうか?
#三島市