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伊豆に一足早い春を運ぶ、さわやかで甘い柑橘。河津・東伊豆で育まれる「いずのはる」

公開日:2026.03.11

果物

特集

河津桜で知られる、伊豆半島の河津町と東伊豆町。温暖な気候に恵まれたこの地で、春のはじまりに旬を迎える柑橘があります。その名も「いずのはる」。皮が手で簡単にむけて、さわやかな甘さが口いっぱいに広がる、伊豆ブランドの柑橘です。今回は、生産者の土屋常平さんと、JAふじ伊豆の土屋明浩さんに、「いずのはる」に込めた想いを伺いました。

 

静岡県の伊豆半島で、全国に先駆けて咲く河津町原産の河津桜。2月を迎えると、半島のあちこちで濃いピンク色の花が咲き始め、多くの観光客がこの地を訪れます。

 

そんな河津桜が咲く頃に旬を迎えるのが「いずのはる」。この柑橘は、JAふじ伊豆が持つブランド名。正式な品種名は「はるひ」といいます。

 

平成3年に静岡市にある農林水産省果樹試験場興津支場(当時)で誕生し、平成23年に品種登録。その翌年の平成24年から河津町と東伊豆町で栽培が始まりました。

 

 「『いずのはる』は、まだ植栽を始めて12年ぐらいの新しい柑橘なんです。苗木が数十本しかなかった頃から、産地化しようと部会を立ち上げて、現在では40005000本まで育ちました」

 

そう教えてくれたのは、JAふじ伊豆 東伊豆営農経済センター長の土屋明浩さん。

 

出荷用の段ボールには、山吹色の果実と河津桜のイラストとともに、「ハジマリのカンキツ、いずのはる」という文字が躍ります。河津桜と同じ頃に旬を迎え、春のはじまりを告げる柑橘にぴったりのキャッチコピーです。

 

この日訪れたのは、河津町にある土屋常平さんの畑。代々続く農家の3代目である常平さんは、15年前に退職して家業を継ぎました。現在、いずのはるをはじめ、甘夏やニューサマーオレンジなど多品目を栽培しています。

 

そして驚くべきことに、「いずのはる」の名付け親は、土屋常平さんご本人。

 

「部会の中で公募があり、私が出した案が採用されたんです。河津桜と一緒に楽しめる柑橘という想いを込めて、『いずのはる』と名付けました」

 

河津桜の咲く頃と重なるため、ぴったりだと採用に。漢字ではなく「ひらがな」にしたのは、親しみやすさを大切にしたから。やわらかな響きが、春の訪れを感じさせます。

 

「一年中、ずっと何かしら動いてますね。収穫が終われば肥料をまいて、枝を切る。5月に花が咲いたら、実の数を調整したり、一つひとつに袋をかけたり……。そうやって育てていくんです」。そう語る常平さん。

手間を惜しまず、丁寧に向き合い続けることが、おいしい「いずのはる」を作る秘訣です。

 

収穫の際も、実を傷つけないよう枝を二度に分けてカットする「二度切り」を徹底。細やかな手仕事が、確かな品質を支えています。

 

実は、常平さんと明浩さんは親子。立場は違えど、「いずのはる」を広めたいという想いは同じ。JAで働きながら休日は父の畑を手伝う明浩さんは、こう語ります。

 

「部会で勉強会を開いて、品質を高める取り組みを続けています。JAだけでなく、生産者や町の人たちと一緒に『いずのはる』を広げていけたら嬉しいです」

 

平成28年から販売が始まった「いずのはる」は、平成30年度に静岡県のブランド「頂(いただき)」(しずおか食セレクション)に認定。近年は東京・二子玉川の玉川高島屋SCで毎年「いずのはる&紅ほっぺフェア」を開催するなど、県外にもファンが増えています。

 

 取材当日、河津町にあるJAふじ伊豆 柑橘第一共選場を訪れると、生産者から届けられた「いずのはる」が緑のコンテナに山積みになっていました。ここでは週に2回、選別が行われます。


まずは人の手で一つひとつ確認。傷や状態をチェックしてから機械へと送り込みます。

 

 

 次にカメラが待ち構える選別ラインへ。カメラが外観や色づき、大きさを瞬時に判別します。

 

さらにラインは進み、光センサーのセクションへ。ベルトコンベアを流れる果実に光を当てることで、皮をむかずに糖度や酸度を一瞬で測定します。

 

「農家さんが大切に育てた『いずのはる』の中身を、光の力で正確に調べているんです」と明浩さん。

広大な共選場には、複雑なレーンが張り巡らされています。等級やサイズごとに果実が自動で振り分けられていく様子は、目を見張るほどの迫力!

 

センサーを通ると3ランクに振り分けられ、それぞれの箱に収まっていきます。

その中でも上位等級(赤秀)は糖度12度以上が基準となります。こうして品質の高い果実だけが「いずのはる」として市場へと旅立っていきます。

 

「温州ミカンと同じくらいのサイズで、皮がとても柔らかく、果汁がたっぷり詰まっているのが『いずのはる』の魅力です」と明浩さん。

 

この「柔らかさ」のおかげで、ナイフを使わずに手でそのままむくことができます。食べたいと思った瞬間に、すぐその場で楽しめる手軽さも、人気の理由です。

 

 

もしナイフでカットするなら、少しコツがあります。種が多くて房もしっかりしているので、横に切る「スマイルカット」ではなく、縦に切る「房カット(くし形切り)」がおすすめ。この切り方なら、食べやすさがぐんとアップします。

 

 

そして、ぜひ試してほしいのが生搾りジュース。果汁が多い「いずのはる」だからこそ、搾りたてのひと口目は感動もの。コク深い甘さとさわやかな酸味がぎゅっと凝縮した、贅沢な味わいを楽しめます。

 

収穫は1月下旬から2月中旬にかけて行われ、出荷のピークは2月中旬から2月いっぱいまで。まさに河津桜まつりの開催時期と重なります。

 

「河津桜と一緒に楽しめる柑橘として、農協ブランドを大切に育てていきたい」と土屋さん親子は意気込みを語ります。

 

この時期、河津町内や静岡県東部の大手スーパー、東伊豆町の伊豆稲取漁港にある直売所「こらっしぇ」などで「いずのはる」は購入できます。満開の河津桜を眺めながら、旬を迎えた「いずのはる」を味わう。そんな伊豆ならではの春を、ぜひ体験してみてください。

 

#東伊豆町 #河津町