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【令和3年度仕事人受賞者のご紹介】天野 裕平さん

天野裕平さんの創作料理は遊びが効いている。といっても大人の真剣な遊びである。店名は「C-2 HINODE」でシーノニ ヒノデと読ませる。島田駅前日乃出町の飲食店を集めたビルの2階にあり、鉄の扉に鈍色の壁という設えは隠れ家を思わせる。一枚板カウンターに置かれたメニューに目を移すと、海老のかわいいイラストが…。尋ねると伊勢海老の創作料理を表しているという。

そんな料理の数々を地元陶芸家の手による一点物の器でいただく。メイン写真は「一黒シャモ」と「ホホホタケ」による土鍋御飯。前者は島田の養鶏場が遠州で育てている地鶏で、後者は島田市で栽培されているハナビラタケだ。さらに香りを添えるのは富士宮の九条ねぎ。どれもまだ馴染みの薄いブランドかもしれないが、れっきとした県産食材ばかりである。お酒も希少なものを揃え、静岡安倍奥で蒸留されたシングルモルトウイスキー、島田の大村屋酒造場で醸された純米大吟醸など、左党には垂涎の的だ。

「京都吉兆名古屋店」で修行した天野さんは、クロアチアにある日本国大使館の公邸料理人に採用され、現地で3年ほど腕をふるった。ある日、大使館のもてなし料理に白和えを出してみたが、はなから敬遠されてしまった。欧州の人々には、どうも見た目が苦手らしい。そこで和え衣をソースのようにアレンジして出したところ、うってかわって大好評を博したという。食文化の違いを理解し、受け入れる大切さを痛感した出来事だった。和食をベースにしながらも、こうした異国での体験が自らの引き出しとなり、天野さんの遊びのネタになっている。

「楽しんでもらうことが目的ですから」と天野さん。料理もお酒もその手段に過ぎないと言い切る。「楽しませ方」を自由に創ること。それが天野さんの創作料理なのであり、その遊びに輝きを与えるのが食材の宝庫・静岡の新進気鋭の食材に他ならない。

 

静岡食材を使った人気メニュー

遠州一黒軍鶏とホホホタケの鍋焚き飯 九条ねぎの香り、九条ねぎの摺り流し(冬季)、純米酒の あまいの など ※メニューはほぼ日替わり

 

この店で使っている静岡食材

シャモ・海老芋・ホホホタケ、椎茸(島田市)、九条ねぎ(富士宮市)、新玉ねぎ(島田市・掛川市)、純米酒(島田市) など

仕事人

天野 裕平

C-2 HINODE シーノニ ヒノデ

「C-2 HINODE(シーノニ ヒノデ)」オーナーシェフ。島田市出身。関西の大学を卒業後、懐石料理の名店「京都吉兆名古屋店」で4年半修業し、その後の3年を在クロアチア日本国大使館の公邸料理人として過ごした。現地では政財界のゲストらを招いた会食を担当し、欧州各国の要人を和食でおもてなし。また、料理教室で出汁の引き方、刺身の切り方などをクロアチア人シェフに伝授。「日本文化を正しく伝えなければ」との思いを深くする。帰国後は東京五輪の開催を楽しみに都内の和食店に勤務していたが、「住み慣れたところで子育てし、島田の街の盛り上げにも貢献したい」と2021年地元で自分の店を構えた。食に関する多様な人的ネットワークを自らの創作料理に活かしている。

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地元産の純米酒と地鶏の卵で作る、ムースのようでプリンのような「純米酒の あまいの」。日本酒の甘味・酸味・苦味が口の中でほどける。

クロアチアの日本国大使館で公邸料理人として腕をふるっていた頃のスナップ。現地のイベントでは魚をさばいて、すしの握りを披露する機会もあった。

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